臨時レポート

仏大統領選でマクロン氏が勝利-欧州経済と株式市場の行方は?

2017年05月08日

キース・ウエ―ド

キース・ウエ―ド

チーフ・エコノミスト兼ストラテジスト

マーティン・スカンバーグ

マーティン・スカンバーグ

欧州株式ファンドマネジャー

 5月7日のフランス大統領選の決選投票において、中道系独立候補のエマニュエル・マクロン元経済産業デジタル相が勝利しました。
 マクロン大統領の誕生で欧州経済や株式市場はどう動いていくのでしょうか?シュローダーのチーフ・エコノミスト兼ストラテジストのキース・ウエードと欧州株式チーム ファンドマネジャーのマーティン・スカンバーグの見方をご紹介します。

 「マクロノミクス」はフランスと同国経済に何をもたらすか?

キース・ウエード
 マクロン氏はポピュリストのように見られていますが、実際には中道派であり、彼の政策は極めて主流派的なものです。彼は財政刺激策、500億ユーロ規模の投資ファンド設立や法人税減税を主張しています。
 中道左派系の政治スタンスの通り、マクロン氏は税制や社会福祉について再分配政策を推進する方針で、フランス国内の現状を考えると、これにより成長が若干加速する可能性もあります。
 また、親EU(欧州連合)派であることから、恐らく仏独同盟が復活し、EU強化に向けた話し合いが進展すると見られます。これらはすべて、市場に対してプラスの要素と考えられます。

マーティン・スカンバーグ
 真の経済変化をもたらすためには、マクロン氏は非常に難しい判断を迫られるでしょう。
 フランス企業の競争力を高め、親EUの姿勢を維持し、社会保障制度の問題点に取り組み、同時に財政赤字を削減する。これを成し遂げることは困難だと見ています。
 しかし、週35時間労働制の改革と法人税減税を実現できれば、フランス経済にとって力強い利益成長の余地があると考えています。フランス経済の回復に対してもっとポジティブな見方をしてもいいでしょう。

仏大統領選はユーロ圏の株式市場にとって転換点となるか?

マーティン・スカンバーグ
 マクロン氏の勝利は、市場を後押しする材料になると考えています。フランス大統領選の結果次第で欧州への投資を増やす用意があった投資家は多いと思われることから、選挙結果が判明し、欧州株式は長期的な上昇局面の入り口に立ったと見ています。
 EUという枠組みにおける構造的な問題は、世界中の投資家に大きな懸念を与えてきました。懸念の一つが払拭されたことで、リスク資産やグローバル株式への資金回帰の余地は十分にあります。グローバル株式の中では特にユーロ株式に割安感があることから、資金の配分先となり得ると考えています。
 ユーロ株式は割安感が魅力であるだけでなく、収益も改善傾向にあります。フランス大統領選挙という大きな不安要因が解消され、更に資金流入を後押しすると考えられます。

ユーロ株式の転換局面において、注目するセクターは?

マーティン・スカンバーグ
 ユーロとユーロ圏資産への資金回帰が起きる中で注目したいのは、景気の影響を受けにくく、業績の安定している、いわゆるディフェンシブ寄りのセクターです。欧州の輸出企業は長期のユーロ安の恩恵を受けてこれまで好業績でしたが、ユーロ圏への資金回帰などによりユーロ高に転じると、内需系企業が有利となる点に留意する必要があります。
 資本財セクターは収益への期待から割高になってきたため、弱含む可能性があると考えています。一方、ディフェンシブセクターはこれまで株価が出遅れてきました。たとえば、欧州の医薬品セクターは、欧州内の他のセクターと比較しても、他地域の医薬品セクターと比較しても割安感があり、加えて収益の好転も見込めると考えられます。
 また、一部の銀行や、自動車関連、建設などにも株価上昇余地があると見ています。これらの業種のフランス企業は魅力的と考えています。

欧州株式への資金流入は既に株価に織り込まれているか?

マーティン・スカンバーグ
 
米国株式やグローバル株式と比較して、いかに欧州株式が出遅れているかを見ると、欧州株式の回復はまだ初期段階にあると考えています。
 欧州企業のファンダメンタルズ、つまり、財務状況等の基礎的要素は良好と考えられます。一方で、企業価値に対して、欧州株式は構造的に割安な水準にあると見ています。
 欧州においては、一部企業の高成長にもかかわらず、全体としての収益改善の勢いは弱く、それが市場の悩みの種でもありました。収益改善の実績を確認する必要があると見られてきましたが、最近になって明確な成長の加速が見えてきています。

今後の欧州政治リスクについて

キース・ウエード
 まず、英国のEU離脱については、親EU派のマクロン氏がフランス大統領となることで、離脱交渉は非常に厳しい状態が継続するでしょう。
 また、イタリアは次の大きな政治イベントとして注目されます。ベッペ・グリッロ氏の率いる政党、五つ星運動は健闘しているものの、政権を握るためには連立を組む必要があると見られます。党内にも複数の分断を抱えており、実際にEU離脱に進むかは不透明な状況です。従って、イタリアのEU離脱リスクは、フランス大統領選挙の際にEU離脱が懸念されたほどの大きさにはならないと思われます。
 しかし、政治情勢は混とんとする可能性もあります。我々が懸念しているのは、五つ星運動が政権を取った場合に財政規律が失われることです。EU離脱に比べれば小さな火種かもしれないものの、2~3年後に問題が顕在化する可能性もあります。

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