シュローダー・インサイト

サステナビリティ ー自動車ファイナンスが直面しつつある課題に対するエンゲージメントー

2018年05月11日

ジェシカ・グランド

ジェシカ・グランド

スチュワードシップ グローバル・ヘッド

シュローダーでは、企業とのエンゲージメントや実態調査など、サステナビリティへの取り組みを掲載したサステナブル・インベストメント・レポートを四半期毎に作成しています。本レポートでは、2018年第1四半期のサステナブル・インベストメント・レポートを構成する内容の一部をご紹介します。今回のテーマは自動車ファイナンスが直面しつつある課題です。

近年、銀行セクターでは不適切な取引に関するスキャンダルが大きく報道されたり、司法・規制当局による調査や制裁金が科されるなど、監視の強化が進んできた一方で、自動車ファイナンスセクターに関しては、これらの監視にさらされることは、これまで多くありませんでした。しかし現在、多くの先進国の消費者債務残高の中で大きなシェアを占める自動車ファイナンスに対して、注目が向けられつつあります。英国の金融行為監査機構(FCA)は、自動車ファイナンス産業について調査を実施することを公表し、他国の規制当局も懸念を表明しています。全体的に自動車メーカーは金融機関に比べると、この種の監視の強化に対する準備が十分でないように見受けられます。シュローダーでは、自動車ファイナンス事業において自動車メーカーが持つ強みと弱みを把握し理解を深めるために、調査を行いました。

多くの先進国経済において自動車ファイナンスは、消費者債務の大部分を占めるまでに成長しており、自動車メーカーのビジネスモデルを考える上でも非常に重要なものとなっています。米国および英国の新車の90%、欧州連合加盟国の新車の80%が、ローンまたはリースを利用して購入されています¹。金融危機以降、規制当局は銀行による個人ローンのビジネス慣行や顧客への対応に関して監視を強化させてきましたが、今後は自動車産業も同様の圧力に直面していくと考えており、特に消費者信用債務残高の全体の30%を自動車ファイナンスが占める英国²ではそのような動きが顕著に表れると考えます。

PCPとは

自動車ファイナンスが増加している主な背景として、「個人契約購入」(PCP)の利用者の増加が挙げられます。PCPは、頭金の支払いの必要はなく、一定期間月次で支払いを行う仕組みとなっており、最終回の支払い後は自動車の返却、新たな自動車購入の契約、または契約時に設定した残価での買い取りが可能となっています。中古車は、最終的な残価の見積もりが困難であるため、PCPは通常中古車には適応されることはほとんどありません。結果として、PCPを利用した新車購入の数は増加の一途を辿り、英国では新車購入のための年次の貸出金額は過去8年で3倍にまで膨れ上がり、2016年には316億英ポンドに達しています。

規制監視の強化とエンゲージメントを行った背景

自動車ファイナンスビジネスを取り巻く懸念としては、米国や英国における金利上昇によって自動車ファイナンスのデフォルト率が増加し、これまでの無責任な貸出行動が露呈するといったものがあります。また中古車価格の低下リスクもあり、自動車ファイナンスが設定する満期時の残余価格の減額を招く可能性があります。このような懸念も認識される中で、我々がこれまでのところ最も注視しているのは、自動車メーカーの責任ある貸出行動および規制強化リスクに対する弾力性です。2011年に英国で起きた債務返済補償保険(PPI)の不適切な販売を巡る一連の出来事は、消費者を誤った方向に導いたことによるコストを示唆しているといえます。FCAは、PPIについて苦情を入れた顧客に対し、2011年11月から2017年12月までの間で290億英ポンド³を超える返金や賠償金が支払われたという見積もりを公表しています。

これら潜在リスクが表面化しつつあるなか、英国では、「自動車ファイナンスにおける透明性の不足、潜在的な利害の不一致、無責任な貸出」を巡る懸念から、FCAは自動車ファイナンスレビューの実施を公表しており、この調査は2018年9月に完了予定です。また、オーストラリアの公正取引委員会は、苦情や消費者の権利を巡り、フォルクスワーゲン、起亜自動車、フィアット・クライスラーを対象に調査を行いました。米国では消費者金融保護局が、自動車メーカーや第三者機関によるマイノリティの借り手に対する偏見、消費者収入の虚偽申告、また責任ある貸出条項の欠落などに対し、制裁金を科しました。

 

レポートの続きはこちら

 

1 Exane BNPパリバ リサーチ
2 Bank of England Financial Stability Report、Issue number 41, 2017年6月
3 Financial Conduct Authority Monthly PPI Refunds and Compensation、2016年4月

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